行動経済学が面白い~その2:解説編
2013年5月9日 考察記事 コメント (5)それでは解説編です。皆さんの回答はいかがでしたか。
自分の答えは、昨日の記事のコメントにも書いたとおりです。
確率論では、事象の起きる確率とその事象から得られることが期待される利益、
すなわち期待値が計算できます。
ゲーム理論では、その利益を最大化するための戦略を考察します。
しかし、人間は時として利益を最大化する戦略をとらないことがしばしばあります。
その人間の行動を経済学と結びつけて考察するのが、行動経済学です。
まずQ.1ですが、単純な確率論あるいはゲーム理論では、どちらの選択肢からも
得られる期待値は100万円なので、両者は同等の価値と考えます。
しかし、だいたい8割くらいの人が2)を選択するそうです。
これは、確実な儲けの2)ほうが、損失する機会のある1)よりも大きな価値があると
見ている、と解釈されます。儲けるチャンスよりも同じ金額を失うリスクを過大に
評価しているからです。このような人間の特性を損失回避性といいます。
さらに、自分のイヤなことが起きる確率を過大視しがちで、自分の好むことが起きる
確率を過小視しているとも言えます。
1)を選択した人はその反対で、より多くの儲けの機会のある1)のほうが大きな
価値があると見ていて、自分の好むことが起きる確率を過大視しているわけです。
ギャンブラー体質の傾向と言えるでしょう。
儲けと損失がどれくらいのバランスで釣り合うのか、あるいは確率をどれくらい
過大視・過小視しているかを探るのがQ.2です。
G.E.さんのように、期待値がわずかでも上回れば良い、と答えた方は
かなり合理的に判断できる方だと思います。
儲けと損失が全く同じバランスとする1倍から、損失を極端に嫌がる6倍くらいと、
人によってかなりバラつきのある量ですが、その中央値は2倍だそうです。
つまり大雑把に言って、得られる利益が損失の2倍前後くらいあれば半分くらいの
人が釣り合う、と考えると言えます。
つまり、勝つ確率が50%のゲームでは、追加賞金が没収される金額の倍くらいないと
1)を選択しないという訳です。
期待値が2倍ということは、賞金が同じなら勝つ確率が2/3で負ける確率が1/3くらい
でないと、1)を選択しないということになります。
逆にギャンブラー体質の方なら、賞金が極端に大きくなれば確率が極端に低くても
構わないと判断する傾向が強くなります。宝くじの当選確率がいかに低いかという
ことは皆様ご存知のことと思います。それでも宝くじが売れるのは、自分の好むことが
起きる確率を過大視している人が多くいるからです。
面白いのはQ.3です。実は結果だけ見れば、この設問はQ.1と全く同じなのです。
Q.1の2)とQ.3の1)は150万円もらって帰るということ、
Q.1の1)とQ.3の2)は100万円もらって帰るか200万円もらって帰るのが半々ずつ。
だけど、Q.1の2)を選んだ人のほとんどは、Q.3の2)を選ぶことが多いそうです。
不思議ですよね。
これは200万円もらって50万円払うより、100万円もらって50万円さらにもらえるほうが
嬉しいという心理が働くからです。判断の基準を200万円に置くか、100万円に置くかの
違いで、このような心理を参照点依存性といいます。
さらに200万円のうちの50万円は1/4に過ぎませんが、100万円のうちの50万円は半分にも
匹敵するという心理もあります。これは感応度逓減性と言います。
200万円もらって、50万円を支払うか100万円を支払うかの差50万円と、
100万円もらって、50万円をもらうか何ももらえないのかの差50万円では
前者のほうが小さく感じる心理です。
それによって追加のゲームで負けたときのリスクを過小評価してしまうのです。
このような人間の行動を説明する理論をプロスペクト理論といって、行動経済学の
中でも柱となる理論とされているそうです。
自分の回答は最も平凡なものだった、というわけですね。
このシリーズ、もう少し続けます。。。
自分の答えは、昨日の記事のコメントにも書いたとおりです。
確率論では、事象の起きる確率とその事象から得られることが期待される利益、
すなわち期待値が計算できます。
ゲーム理論では、その利益を最大化するための戦略を考察します。
しかし、人間は時として利益を最大化する戦略をとらないことがしばしばあります。
その人間の行動を経済学と結びつけて考察するのが、行動経済学です。
まずQ.1ですが、単純な確率論あるいはゲーム理論では、どちらの選択肢からも
得られる期待値は100万円なので、両者は同等の価値と考えます。
しかし、だいたい8割くらいの人が2)を選択するそうです。
これは、確実な儲けの2)ほうが、損失する機会のある1)よりも大きな価値があると
見ている、と解釈されます。儲けるチャンスよりも同じ金額を失うリスクを過大に
評価しているからです。このような人間の特性を損失回避性といいます。
さらに、自分のイヤなことが起きる確率を過大視しがちで、自分の好むことが起きる
確率を過小視しているとも言えます。
1)を選択した人はその反対で、より多くの儲けの機会のある1)のほうが大きな
価値があると見ていて、自分の好むことが起きる確率を過大視しているわけです。
ギャンブラー体質の傾向と言えるでしょう。
儲けと損失がどれくらいのバランスで釣り合うのか、あるいは確率をどれくらい
過大視・過小視しているかを探るのがQ.2です。
G.E.さんのように、期待値がわずかでも上回れば良い、と答えた方は
かなり合理的に判断できる方だと思います。
儲けと損失が全く同じバランスとする1倍から、損失を極端に嫌がる6倍くらいと、
人によってかなりバラつきのある量ですが、その中央値は2倍だそうです。
つまり大雑把に言って、得られる利益が損失の2倍前後くらいあれば半分くらいの
人が釣り合う、と考えると言えます。
つまり、勝つ確率が50%のゲームでは、追加賞金が没収される金額の倍くらいないと
1)を選択しないという訳です。
期待値が2倍ということは、賞金が同じなら勝つ確率が2/3で負ける確率が1/3くらい
でないと、1)を選択しないということになります。
逆にギャンブラー体質の方なら、賞金が極端に大きくなれば確率が極端に低くても
構わないと判断する傾向が強くなります。宝くじの当選確率がいかに低いかという
ことは皆様ご存知のことと思います。それでも宝くじが売れるのは、自分の好むことが
起きる確率を過大視している人が多くいるからです。
面白いのはQ.3です。実は結果だけ見れば、この設問はQ.1と全く同じなのです。
Q.1の2)とQ.3の1)は150万円もらって帰るということ、
Q.1の1)とQ.3の2)は100万円もらって帰るか200万円もらって帰るのが半々ずつ。
だけど、Q.1の2)を選んだ人のほとんどは、Q.3の2)を選ぶことが多いそうです。
不思議ですよね。
これは200万円もらって50万円払うより、100万円もらって50万円さらにもらえるほうが
嬉しいという心理が働くからです。判断の基準を200万円に置くか、100万円に置くかの
違いで、このような心理を参照点依存性といいます。
さらに200万円のうちの50万円は1/4に過ぎませんが、100万円のうちの50万円は半分にも
匹敵するという心理もあります。これは感応度逓減性と言います。
200万円もらって、50万円を支払うか100万円を支払うかの差50万円と、
100万円もらって、50万円をもらうか何ももらえないのかの差50万円では
前者のほうが小さく感じる心理です。
それによって追加のゲームで負けたときのリスクを過小評価してしまうのです。
このような人間の行動を説明する理論をプロスペクト理論といって、行動経済学の
中でも柱となる理論とされているそうです。
自分の回答は最も平凡なものだった、というわけですね。
このシリーズ、もう少し続けます。。。
コメント
凄い!
行動経済学、ちょっと興味がわきました!
凄いのかどうかは良くわからないですが、褒めてくださってありがとうございますヾ(@⌒ー⌒@)ノ
人はなかなか合理的に行動できないものですからね。
楽しんでいただけたら、こちらも嬉しいです。
この中に出たギャンブラー気質はギャンブル依存症のそれ
ギャンブラーは基本的に利益の確実な最大化を目指す
ちなみに行動経済学は詐欺に応用しやすい
自分の好むことが起きる確率を過大視するという点をギャンブラーと表現してますが、
それこそ依存症の思考パターンですね。
ご指摘の通りです。
「利益の確実な最大化を目指す」プレイヤーは、この記事では「ゲーム理論のプレイヤー」
としていまして、ギャンブラーと表現していません。。。
そのようにご理解いただけたら、幸いです~。
>行動経済学は詐欺に応用しやすい
そのご指摘も、ご尤もです。
逆に行動経済学的な視点があれば、詐欺も未然に防げるはず、とも思ってます。